解体工事業登録について

現在の日本のインフラは老朽化が激しくなっています。
国土交通省インフラ長寿命化計画のp.6の表によると、建設後50年を経過するインフラが2030年には橋梁は55%、トンネルは36%になるとの見通しです。
また、2040年には橋梁の75%、トンネルの53%が建設後50年を経過するとのことで、迅速に対応していくことが重要になっています。

そして、そのインフラ整備に欠かせないのが解体工事業です。
解体工事業を営むには、解体工事業登録もしくは建設業許可が必要になってきます。

今回は、解体工事業を行う上で重要な解体工事業登録について解説していきます。

1.解体工事業登録ってなに?

解体工事業登録とは、元請や下請に関わらず、解体業を営もうとする場合に必要な登録です。
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法) により、下記のように定められています。

第二十一条 解体工事業を営もうとする者(建設業法別表第一の下欄に掲げる土木工事業、建築工事業又は解体工事業に係る同法第三条第一項の許可を受けた者を除く。)は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。

e-Gov法令検索建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律より引用

上記に記載している通り、解体業を営む場合には必ず登録が必要ですが、一方で、土木一式、建築一式、解体業についての建設業許可を受けている方は登録は不要となっています。

下記の図で登録が必要か必要でないかが分かりますので、ぜひご活用ください。

解体工事業登録の申請から登録通知が届くまでの期間は大阪府の場合、土日祝を含めた4週間程度とされています。
(年末年始、大型連休は含みません。)
また、解体工事業登録は、解体工事を行う現場の都道府県知事ごとに登録を受ける必要があります。

解体工事業登録の有効期限は、5年間となっており、有効期限満了の30日前までに更新申請する必要があります。

2.解体工事業登録の条件

解体工事業登録を受けるには満たさなければならない2つの条件があります。
①登録が拒否される項目に該当しないこと
②技術管理者がいること

では、上記の2つの条件を解説します。

 ①登録が拒否される項目に該当しないこと

解体工事業登録には、該当すると登録が拒否される項目があります。
建設業時に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)には下記のように記載されています。

第二十四条 都道府県知事は、解体工事業者の登録を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
一 第三十五条第一項の規定により登録を取り消され、その処分のあった日から二年を経過しない者
二 解体工事業者で法人であるものが第三十五条第一項の規定により登録を取り消された場合において、その処分のあった日前三十日以内にその解体工事業者の役員であった者でその処分のあった日から二年を経過しないもの
三 第三十五条第一項の規定により事業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
四 この法律又はこの法律に基づく処分に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
五 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者(第九号において「暴力団員等」という。)
六 解体工事業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号のいずれかに該当するもの
七 法人でその役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの
八 第三十一条に規定する者を選任していない者
九 暴力団員等がその事業活動を支配する者

e-Gov法令検索建設業時に係る資材の再資源化等に関する法律より引用

まとめると次のようになります。
①解体工事業の登録を取り消され、取り消された日から2年を経過しない者
②解体工事業の登録を取り消され、取り消された日の30日前までにその法人の役員であった者で、その日から2年を経過しない者
③解体工事業の事業停止期間を満了していない者
④建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)に違反し、罰金以上の刑に処せられ、執行が終わった日または恩赦等で執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
 ※執行猶予の場合は満了した時点で該当しません
⑤暴力団員及び暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者
⑥解体工事業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が①~⑤のいずれか
に該当する者
⑦法人でその役員のうちに①から⑤までのいずれかに該当する者
⑧技術管理者を選任していない者
⑨⑤が営業を支配している場合

登録を受けようとする場合、上記の項目に該当すると登録を拒否されます。
登録が拒否された場合は申請先の都道府県知事から登録を拒否した理由が通知されます。
※通知に関しては、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行細則 (都道府県名)で検索すると細かな様式が出てくるのでご覧ください。

 ②技術管理者がいること

解体工事業登録には解体工事現場を施工するにあたり、技術上の管理をつかさどる技術管理者という方が必要です。
技術管理者について、建設業時に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)では第三十一条に「選任しなければならない」と記載されています。
選任されていない場合、罰せられる可能性がありますのでご注意ください。

技術管理者になれる方は解体工事業に係る登録等に関する省令第七条により定められています。

第七条 法第三十一条に規定する主務省令で定める基準は、次の各号のいずれかに該当する者であることとする。
 次のいずれかに該当する者
 解体工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。次号において同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後四年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。次号において同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。次号において同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後二年以上実務の経験を有する者で在学中に土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む。)、建築学、都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科(次号において「土木工学等に関する学科」という。)を修めたもの
 解体工事に関し八年以上実務の経験を有する者
 建設業法(昭和二十四年法律第百号)による技術検定(第二次検定に限る。第七条の十八第一項第二号において同じ。)のうち検定種目を一級の建設機械施工管理若しくは二級の建設機械施工管理(種別を「第一種」又は「第二種」とするものに限る。)、一級の土木施工管理若しくは二級の土木施工管理(種別を「土木」とするものに限る。)又は一級の建築施工管理若しくは二級の建築施工管理(種別を「建築」又は「躯体」とするものに限る。)とするものに合格した者
 建築士法(昭和二十五年法律第二百二号)による一級建築士又は二級建築士の免許を受けた者
 職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)による技能検定のうち検定職種を一級のとび・とび工とするものに合格した者又は検定職種を二級のとび若しくはとび工とするものに合格した後解体工事に関し一年以上実務の経験を有する者
 技術士法(昭和五十八年法律第二十五号)による第二次試験のうち技術部門を建設部門とするものに合格した者
 次のいずれかに該当する者で、国土交通大臣が実施する講習又は次条から第七条の四までの規定により国土交通大臣の登録を受けた講習(以下「登録講習」という。)を受講したもの
 解体工事に関し学校教育法による高等学校若しくは中等教育学校を卒業した後三年以上又は同法による大学若しくは高等専門学校を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後一年以上実務の経験を有する者で在学中に土木工学等に関する学科を修めたもの
 解体工事に関し七年以上実務の経験を有する者
 第七条の十七、第七条の十八及び第七条の二十一において準用する第七条の三の規定により国土交通大臣の登録を受けた試験(以下「登録試験」という。)に合格した者
 国土交通大臣が前三号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有するものと認定した者

e-Gov法令検索解体工事業に係る登録等に関する省令第七条より引用

まとめると次のようになります。
①土木工学等に関する学科で高等学校もしくは中等教育学校を卒業してから四年以上の実務経験がある者
②土木工学等に関する学科で大学もしくは専門学校を卒業してから二年以上の実務経験がある者
③解体工事に関して八年以上の実務経験がある者
④下記のいずれかの検定を持っている者
 ・建設機械施工管理 一級または二級(第一種または第二種)
 ・土木施工管理 一級または二級(土木のみ)
 ・建築施工管理 一級または二級(建築または躯体)
 ・建築士 一級または二級
 ・(職業能力開発促進法による)技能検定 一級または二級(とび・とび工で解体工事の実務経験が1年以上)
 ・技術士 第二次試験合格者(技術部門が建設部門である場合のみ)
登録講習を受講済みの者については下記のいずれか
 ・土木工学等に関する学科で高等学校もしくは中等教育学校を卒業してから三年以上の実務経験がある
 ・土木工学等に関する学科で大学もしくは専門学校を卒業してから一年以上の実務経験がある
 ・解体工事に関して七年以上の実務経験がある
⑥登録試験に合格した者
⑦国土交通大臣に①~⑥に掲げる者と同等以上の知識及び技能を持っていると認定された者

※土木工学等に関する学科とは土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科)、建築学、都市工学、衛生工学又は交通工学等に関する学科のことを指します。

※解体工事業登録で必要な技術管理者は建設業許可の常勤性が必要な立場にはなれません。

3.必要書類と申請手数料(大阪府知事の場合)

解体工事業登録の必要書類は、提出書類と提示書類に分かれており、申請手数料は新規と更新で金額が変わってきます。

※大阪府知事認可申請の場合での書類と申請手数料です。
※大阪府以外に申請の方は申請先の都道府県が出している手引きをご覧ください。

新規:申請手数料 33,000円
更新:申請手数料 26,000円

[提出書類]

解体工事業申請書(規則様式第1号)
 ※大阪府外に営業所がある場合、その営業所も記載してください。
誓約書(規則様式第2号)
技術管理者の資格要件を確認する書類のうち下記の書類
  ア 実務経験証明書(規則様式第3号)(実務経験を必要とする場合)
  イ 卒業証書・卒業証明書の写し(指定学科卒業の場合)
  ウ 資格証明書・解体工事施工技術講習修了証の写し(有資格者・講習終了者の場合)
登録申請者の調書(規則様式第4号)
 ※法人の場合、役員全員、相談役、顧問、100分の5以上の個人の株主等、個人事業主の場合、法定代理人の方の分が必要です。
 ※賞罰欄は相談役、顧問、100分の5以上の個人の株主等については記入不要です。
 ※署名は相談役、顧問、株主等については不要です。
申請者の所在確認書類のうち下記のいずれか
  ア 発行後3ヶ月以内の商業登記簿謄本の原本又は写し(申請者が法人の場合)
  イ 発行後3ヶ月以内の住民票(マイナンバー記載がないもの)の原本又は写し(申請者が個人の場合)
法定代理人の証の写し及び法定代理人の発行後3ヶ月以内の住民票(未成年者の場合)
委任状の原本(副本は写し、代理人が申請する場合)

[提示書類]

技術管理者の在籍を確認する書類のうち下記のいずれか一つ
 ※技術管理者が代表者の場合は不要です。
  ア 技術管理者の健康保険証の写し(申請者が雇用主と確認できるもの)
  イ 技術管理者の雇用保険証の写し( 申請者が雇用主と確認できるもの)
  ウ 技術管理者の給与支払が確認できる直近3か月分の給与台帳の写し
   (申請の3か月以内に雇用された場合は、申請者との間で交わされている雇用契約書の写し及びそれ以降の給与台帳の写し)
営業所や支店の所在地を確認する書類のうち下記のいずれか
 ※本店以外の支店がある場合、法人については商業登記簿上の所在地以外、個人については住民票の住所以外を主たる営業所として申請する場合に提示が必要です。
  ア 賃貸契約書の写し(賃貸の場合)
    ※賃貸契約書の使用目的が居住用、事務所禁止、申請者と借主が異なる場合等については、貸主の使用承諾書が必要です 。
  イ 発行後3か月以内の建物登記簿謄本、申請直前の固定資産税納税通知書又は申請直前の固定資産評価証明の写し(自己所有の場合)
解体工事業登録通知書の原本又は写し(更新の場合のみ)
本人確認書類のうち下記のいずれか一つ(原本)
 ①運転免許証
 ②健康保険証(被保険者証)
 ③特別永住者証明書・在留カード
 ④住民基本台帳カード(住基カード)
 ⑤後期高齢者医療被保険者証
 ⑥パスポート
 ⑦船員保険証
 ⑧身体障害者手帳
 ⑨官公庁又は公的機関や団体が発行する資格証
 ⑩申請者の発行する身分証明書(申請者の役員又は従業員である場合のみ可)

4.登録後の流れ

解体工事業登録が無事完了した方向けに登録完了後の流れについて解説します。
登録後の流れは主に下記の4つがあります。
①更新申請
②変更届の提出
③廃業または抹消の届出
④アスベスト事前調査結果の報告

中でも④については、令和4年4月1日から義務化された重要な事項になっています。

 ①更新申請

解体工事業登録をした事業者は、5年の有効期間が満了する30日前までに登録の更新をする必要があります。
大阪府の場合、更新申請は有効期間満了の日の3ヶ月前から受付をしているのでなるべく早く申請するのがおすすめです。

 ②変更届の提出

登録の内容について変更があった場合は、事実発生後30日以内に変更の届出が必要です。
届出が必要な内容については次のとおりです。
・商号・名称
・営業所の所在地・個人の住所
・営業所の名称
・役員
・法定代理人
・技術管理者

以上6つの項目のいずれかについて変更があった場合、変更届を必ず提出する必要があります。

 ③廃業または抹消の届出

解体工事業登録を受けている事業者が何らかの理由で廃業または登録の抹消をする場合、事実発生後30日以内に届出をする必要があります。
廃業の届出理由と届出をする人については下記の表にまとめています。

届出理由届出をしなければならない人
①死亡した場合相続人
②法人が合併により消滅した場合その法人を代表する役員であった者
③法人が破産手続開始決定により解散した場合破産管財人
④②と③以外の理由で解散した場合清算人
⑤解体工事業を廃止した場合法人:その法人を代表する役員
個人:本人
⑥建設業許可を取得した場合法人:その法人を代表する役員
個人:本人

抹消については建設業許可(土木、建築、解体工事業のみ)を受けた場合に法人の場合は代表する役員、個人の場合は本人の届出が必要です。

 ④石綿(アスベスト)事前調査結果の報告

令和4年4月1日から建築物等の解体や改修を行う施工業者は大気汚染防止法により石綿(アスベスト)の有無の事前調査結果を都道府県等と労働基準監督署に報告することが義務になりました。
スマホやパソコンなどで「石綿事前調査結果報告システム」というオンラインシステムから報告することになります。
報告が必要な解体工事については次のとおりです。

・建築物の解体工事(解体作業対象の床面積80 ㎡以上)
・建築物の改修工事(請負金額が税込100万円以上)
・工作物の解体・改修工事(請負金額が税込100万円以上)
(・鋼製の船舶の解体・改修工事(総トン数20トン以上))


※報告の義務があるのは、発注者から直接請け負った元請(自主施工の場合も含む)のみです。
※請負代金の合計額は、材料費と消費税を含みます。(事前調査の費用は含みません)
※請負契約が発生していない場合でも、請負人に施工させた場合の適正な請負代金相当額で判断します。
※船舶の解体・改修工事については建築基準法上の「建築物」、建設リサイクル法上の「建築物以外の工作物」に該当しないのでカッコ書きにしています。

まとめ

以上、解体工事業登録について解説していきました。
土木、建築、解体工事業の建設業許可を持っている事業者の方は登録が不要なのでご注意ください。
変更届や更新申請は期限があるので、できる限り余裕をもって手続きをしていきましょう。