【建設業許可】
特定許可の要件について

建設業許可には一般と特定、知事と大臣の4種類の許可があります。

一般許可と特定許可の大きな違いは要件のうち、専任技術者と財産的基礎の二つです。
専任技術者と財産的基礎は一般許可よりも難易度が高くなっています。

ここでは、一般許可と違う特定許可の専任技術者や財産的基礎要件について詳しく解説していきます。

※令和5年1月改正で特定許可が必要な下限額が変更されました。
 建築一式以外:4,000万円→4,500万円
 建築一式:6,000万円→7,000万円

1.特定建設業許可とは

建設業法には下記のように記載されています。

 建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が二以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの

e-Gov法令検索建設業法第三条第二号より引用

ちなみに、政令で定める金額とは建築一式工事以外の場合、建築一式工事以外の場合は4,500万円、建築一式工事の場合は7,000万円です(建設業法施行令第二条)。

つまり、発注者から直接請け負った工事に関して下請けに出す金額が建築一式以外の場合は4,500万円以上、建築一式の場合は7,000万円以上の場合に特定許可が必要になるということです。

ただし、4,500万円(建築一式の場合7,000万円)以上の工事を発注者から直接請け負ったとしても、下請けに出さない場合は特定許可が不要です。また、下請けがさらに下請けに出す際に、4,500万円(建築一式の場合7,000万円)以上であった場合も特定許可は不要です。

さらに、一般建設業許可は材料費や材料運搬費を含めての金額が500万円(建築一式の場合1,500万円)を超える場合に必要でしたが、特定許可は材料費、材料運搬費は除いて消費税と地方消費税のみ含んでの合計額が、4,500万円(建築一式の場合7,000万円)を超える場合に必要になります。(許可事務ガイドラインについてp.44「2.法等における「請負代金の額」等の内容について」)

2.特定許可を取るうえでのメリット・デメリット

〈特定許可のメリット〉

メリットは、外注に出せる金額が大きくなることです。
利益が上がる可能性や人手不足の改善にもつながります。
また、元請として動くことも多くなるのでできる工事の幅が広くなったり、建設業者同士のつながりが増えたりというメリットがあります。

〈特定許可のデメリット〉

デメリットは、責任の問題や経営状況を細かく管理する必要がある点です。
特定許可を取ると自分の事業所はもちろん、下請けの事業所も管理する必要が出てきます。
下請けへの代金の支払日についても材料の引き渡し申出日から50日以内に定めなければなりません。

さらに、許可を取得しても財産的基礎要件については、更新時には必ず満たす必要があります

3.特定許可の要件

一般許可と特定許可では要件が変わってきます。ここでは、一般許可と違う要件のみ解説します。

専任技術者

特定許可の専任技術者は下記のいずれかに当てはまる必要があります。

〈特定許可の専任技術者の条件〉
①国土交通大臣が掲げる一定の資格を持っていること
②一般許可の専任技術者の条件を満たしていることと、許可を受けようとする業種について2年以上、4,500万円以上の工事で指導監督的実務経験があること
③国土交通大臣に①に掲げる者と同等以上の能力を有する者として認定されていること

※②については指定建設業7業種(土・建・電・管・鋼・ほ・園)では認められていないので、①または③で満たす必要があります。
※①の資格一覧については営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧をご覧ください。(赤い方の資格が特定許可の資格です。)

指導監督的実務経験とは、現場監督や主任技術者として務めた経験のことです。

財産的基礎

特定許可の場合は、以下の4点の全てをクリアする必要があります。

〈特定許可の財産的基礎要件〉
①欠損の額(利益剰余金)が資本金の20%を超えないこと。
②流動比率(流動負債に対する流動資産)が75%以上  
③直前の決算で資本金額が2,000万円以上
④直前の決算で純資産合計が4,000万円以上
※更新時にも満たしている必要があります。

では、上記①~④について詳しく解説していきます。

①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと

直前の決算期における財務諸表のうち、法人なら貸借対照表の利益剰余金の額がマイナス(△)の場合、個人なら事業主損失がある場合、資本金の額の20%を超えていないかどうか見ます。資本金に対する欠損の額が何%あるのかどうかは下記の式で求まります。

〈法人の場合〉
マイナスの繰越利益剰余金+(資本剰余金+利益準備金+任意積立金))÷資本金×100
=資本金に対する欠損の額の割合(%)

〈個人の場合〉
(事業主損失-(事業主借勘定-事業主貸勘定+負債の部の引当金+負債の部の準備金))÷期首資本金×100
=期首資本金に対する欠損の額の割合(%)

②流動比率が75%以上

直前の決算期における財務諸表のうち、貸借対照表の流動資産に対する流動負債の比率が、75%以上かどうかを確認します。流動資産が流動負債より多い場合は無視して大丈夫です。

流動負債の方が多い場合は下記の式で75%以上かどうか確認してください。

流動資産÷流動負債×100=流動比率

③直前の決算で資本金額が2,000万円以上

直前の決算期における財務諸表のうち、法人なら貸借対照表の資本金の額、個人なら期首資本金が2,000万円以上かどうかを見ます。もし、2,000万円未満の場合でも、申請日までに増資を行えば、この条件を満たしているとみなされます。増資に関しては、税理士さんへのご相談をおすすめします。

④直前の決算で自己資本が4,000万円以上

直前の決算期における財務諸表のうち、法人の場合、貸借対照表の純資産合計の額、個人なら下記の式で4,000万円以上かどうかを見ます。

〈個人の場合〉
(期首資本金+事業主借勘定+事業主利益)-事業主貸勘定+負債の部の引当金+負債の部の準備金
=自己資本

まとめ

以上、特定許可の概要について解説しました。特定許可の要件は一般許可よりも要件の難易度が高くなっている分、取得できれば多くの利益につながる可能性があります。ただし、デメリットもありますので、経営状況を見ながら無理のない範囲で許可を取得できるようにしていきましょう。