建設工事の請負契約における禁止事項

建設業においては、工事の品質や安全性、納期などが大きな問題となります。そのため、請負契約においても、きちんとしたルールが必要です。
本記事では、建設工事の請負契約における禁止事項について詳しく解説していきます。

1.請負契約での禁止事項

建設業法で禁止されている主な事項は次の4つです。
・不当に低い請負代金
・不当な使用資材等の購入強制
・著しく短い工期
・一括下請負の禁止

4つのうち上から3つは発注者(施主)や下請がいる元請が禁止されている事項です。
では、1つずつ解説していきます。

2.不当に低い請負代金の禁止

(不当に低い請負代金の禁止)
第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。

引用:e-Gov法令検索建設業法第十九条の三より

注文者とは、発注者(施主)や下請けがいる請負人全てを指します。
建設業法では、必要とされる工事費用よりも低い価格で発注することを禁止しており、違反した場合は改善の指示がされます。
さらに、指示後に改善されなかった場合は営業停止処分となる可能性があります。(建設業法第二十八条)

不当に低い請負代金を禁止する理由として、
・建設業者間の健全な競争の維持
・施工品質や労働条件の維持向上
などが挙げられます。

また、受注者には利益がなくなり、工事の品質や安全性に影響を与える可能性があるため、結果的に発注者(施主)などにとっても不利益となります。

3.不当な使用資材等の購入強制の禁止

(不当な使用資材等の購入強制の禁止)
第十九条の四 注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない。

引用:e-Gov法令検索建設業法第十九条の四より

元請が資材や機械器具などの購入先を指定してしまうと、下請は他の購入先を選択できなくなり、不当な価格で資材を購入しなければならない可能性があります。
また、業界全体の健全な発展に悪影響を及ぼすことになります。

そのため、元請が下請に資材や機械器具などの購入先を指定することは禁止されています。

4.著しく短い工期の禁止

(著しく短い工期の禁止)
第十九条の五 注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。

引用:e-Gov法令検索建設業法第十九条の五より

著しく短い工期が禁止されている理由は下記の2点です。
・品質や安全に問題(手抜き工事)が生じる可能性がある
・労働環境の悪化

結果的に発注者(施主)などに不利益が出ることや、労働環境の悪化により若い人手が減ってしまう危険性もあります。

5.一括下請負の禁止

(一括下請負の禁止)
第二十二条 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。
 前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。

引用:e-Gov法令検索建設業法第二十二条より

一括下請負が禁止されている理由は、品質を維持するためです。
発注者(施主)は信頼を置いて施工会社に発注しているので、その信頼を裏切る形になってしまいます。
また、責任の所在があやふやになり、問題が起こってしまった場合の対応が遅れてしまう危険性もあります。
なお、一部例外として発注者(施主)から承諾をもらっている場合は一括下請負も可能です。

ですが、一括下請負をしてはいけない建設工事があります。
・公共工事(公共工事入札契約適正化法第十四条)
・共同住宅を新築する工事(建設業法施行令第六条の三)
以上2点に当てはまる工事は承諾があったとしても一括下請負は禁止されています。

まとめ

以上、建設工事の請負契約でのルールについて解説しました。
建設業での厳しい禁止事項は、建設業界においての適正な競争環境を維持し、安定的な事業運営と健全な経営を促進するために設けられています。
国土交通省から出ている受発注者間における法令遵守ガイドライン建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者などにも詳しく記載されているので是非ご覧ください。